
介護現場で生成AIを使うなら必読|個人情報漏えいを防ぐ5つの基本ルール
介護・福祉現場でも、生成AIを使って記録の下書き、文章のたたき台、会議内容の整理などを行う場面が増えてきました。
便利だからこそ、気をつけたいのが 個人情報漏えいのリスク です。
「名前を入れなければ大丈夫」
「少しだけなら問題ない」
「業務効率化のためだから仕方ない」
そんな感覚で使ってしまうと、知らないうちに重大なリスクを抱えてしまうことがあります。
特に介護現場では、氏名や住所だけでなく、病歴、生活状況、家族構成、認知機能の状態など、要配慮個人情報にあたる情報 を日常的に扱います。
そのため、一般的な事務職以上に慎重な運用が必要です。
この記事では、介護・福祉現場で生成AIを活用するときに押さえておきたい、個人情報漏えいを防ぐ5つの基本ルール を、現場目線でわかりやすく解説します。
なぜ介護現場の生成AI活用で個人情報漏えいが問題になるのか
介護現場では、日々の記録や申し送り、ケア内容の共有の中に、利用者さん一人ひとりの極めてセンシティブな情報が含まれています。
たとえば、次のような情報です。
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
- 保険者番号
- 病歴
- 服薬情報
- ADLの状態
- 認知症の症状
- 家族関係
- 金銭管理に関する情報
- 介護サービス利用状況
これらをそのまま生成AIに入力すると、
利用しているサービスの仕様や設定によっては、意図しない形で外部に送信される可能性 があります。
また、組織で利用ルールが整っていないと、職員ごとに使い方がばらつき、
「どこまで入力してよいのか」が曖昧になりやすいのも大きな問題です。
生成AIは便利な道具ですが、
便利さの前に“入力してよい情報かどうか”を判断する視点 が欠かせません。
個人情報漏えいを防ぐ5つの基本ルール
1. 氏名や住所など“個人を特定できる情報”は入力しない
最も基本で、最も重要なルールです。
以下のような情報は、原則として生成AIにそのまま入力しないようにしましょう。
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- 生年月日
- 利用者番号
- 保険証情報
- 顔写真
- メールアドレス
- 家族の氏名
たとえ一つひとつは小さな情報でも、複数組み合わさると個人が特定できることがあります。
NG例
○○様、87歳女性。青森市在住。要介護3。長男と同居。糖尿病あり。最近は夜間せん妄が増えている。
この方のケア記録をわかりやすくまとめてください。
OK例
高齢女性利用者を想定したケア記録の文章例を作成してください。
条件:夜間不穏あり、糖尿病あり、家族と同居、要介護3相当。
実在する情報ではなく、抽象化・一般化した形で入力する のが基本です。
2. 病歴や生活状況など“要配慮個人情報”もそのまま入れない
介護現場で特に注意したいのが、氏名以上にセンシティブな情報です。
たとえば、
- 病歴
- 障害の有無
- 認知症状
- 服薬状況
- 心身の状態
- 家庭環境
- 経済状況
- 支援上の配慮事項
こうした情報は、本人の尊厳や権利に深く関わるため、漏えいした場合の影響が非常に大きくなります。
「名前を消したから大丈夫」と思っても、
年齢・疾患・居住地域・家族状況などが揃えば、特定につながる可能性があります。
“名前を消す”だけでは不十分なことがある
ここは現場で徹底しておきたいポイントです。
3. AIにかける前に“匿名化・仮名化”する
どうしても事例整理や文章作成にAIを使いたい場合は、入力前に情報を加工しましょう。
具体的には次のような置き換えが有効です。
- 氏名 → 利用者A
- 年齢 → 80代
- 住所 → 県内在住
- 家族構成 → 同居家族あり
- 病名 → 慢性疾患あり
- 施設名 → 自施設
- 日付 → 先日、最近
例
変更前
佐藤花子様、84歳、青森市在住。アルツハイマー型認知症あり。長女が週3回訪問。
変更後
80代女性利用者。認知機能低下あり。家族の定期訪問あり。
このように、個人が特定されない粒度まで落としてから使う ことで、リスクを大きく下げられます。
4. 個人で勝手にAIを使わず、施設としてルールを決める
個人情報漏えいの多くは、「悪意」よりも「ルール不足」から起こります。
たとえば現場では、こんな状態が起きやすいです。
- 職員が個人スマホでAIを使っている
- 無料版ツールを自己判断で使っている
- 入力してよい範囲が決まっていない
- 管理者が利用実態を把握できていない
- 出力内容の確認ルールがない
これを防ぐには、施設として最低限、次の項目を明文化しておくことが大切です。
ルール化したい項目
- 使用してよいAIツール
- 使用禁止の情報
- 匿名化の基準
- 利用できる業務範囲
- 出力内容の確認者
- 個人端末利用の可否
- ログイン方法やパスワード管理
「使うな」ではなく、
安全に使うためのルールを整える ことが現実的です。
5. 入力前に“5秒チェック”を習慣化する
最後に大事なのは、現場で続けられるシンプルな習慣です。
AIに入力する前に、次の5秒チェックを行うだけでも漏えいリスクは下げられます。
5秒チェック
- 氏名は入っていないか
- 住所や電話番号は入っていないか
- 病名や家族情報が具体的すぎないか
- 実在の人物が特定できないか
- この内容を第三者に見られて困らないか
迷ったら、入れない。
この判断が一番安全です。
介護現場でAIを安全に活用するための考え方
生成AIは、正しく使えばとても便利です。
たとえば、
- 記録文のたたき台作成
- 研修資料の構成づくり
- 文章の言い換え
- 家族向け説明文の下書き
- 会議要点の整理
こうした業務では大きな時短効果が期待できます。
ただし、重要なのは
“実データをそのまま渡さず、考え方や型を借りる” という使い方です。
つまり、AIに丸投げするのではなく、
- まず人が情報を整理する
- 必要なら匿名化する
- AIで下書きをつくる
- 最後は人が確認して仕上げる
この流れが、介護・福祉現場では特に大切です。
8〜9割AI+最後は人の確認
このバランスが、実務ではちょうどよい落としどころです。
まとめ|「便利だから使う」ではなく「守れる形で使う」
介護現場で生成AIを使うときに大切なのは、
ただ便利さを追いかけることではありません。
利用者さんの尊厳と信頼を守りながら使うこと。
ここが大前提です。
最後に、今回のポイントをまとめます。
- 氏名や住所など、個人を特定できる情報は入力しない
- 病歴や家族情報など要配慮個人情報も慎重に扱う
- AIにかける前に匿名化・仮名化する
- 施設として利用ルールを整える
- 入力前の5秒チェックを習慣化する
生成AIは、現場を助ける力のあるツールです。
でも、使い方を間違えると、信頼を失うリスクにもなります。
だからこそ、
「使うか、使わないか」ではなく、「どう安全に使うか」 を考えることが大切です。
記事末CTA案
生成AIを介護・福祉現場で安全に活用するには、
ツールの導入だけでなく、現場に合ったルール設計と運用が欠かせません。
「何を入れてよくて、何がNGか整理したい」
「職員向けにわかりやすい運用ルールを作りたい」
そんな方は、お気軽にご相談ください。
参考として入れられる一文
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を行うものではありません。実際の運用にあたっては、所属組織の規程や最新の公的ガイドラインをご確認ください。